『patrinia yellow』のためのスピーカー

福島 諭作曲作品のためのデバイス作成と空間構成。

作曲家 福島 諭さんの作曲作品「patrinia yellow」。クラリネット演奏と、一部をリアルタイム録音した音、更にコンピューター処理した音で構成される、女郎花(patrinia yellow)という植物の一年の周期を表現した楽曲とそのライブパフォーマンスです。第18回文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞しました。

国立新美術館で開催された受賞作品展では作品を再現したインスタレーションが展開され、デバイス制作と空間構成のサポートを行いました。白い壁面の極端な縦長空間の中央に、作曲作品をコントロールするPCと、クラリネット奏者のパートを表現するスピーカーが象徴的に配置されています。

リード楽器の音色に特化し「patrinia yellow」の世界観に相応しい形状を3Dプリンターで模索しました。実験を繰り返し、中央に小型ユニットを内包し、上下方向へ徐々に広がる筒形状に辿り着きました。結果的にクラリネットを抽象化したような形となりました。展示空間の四隅に配置された無指向性スピーカーと相まって、独特な音響空間が実現できました。

「問題解決」や「販売実績」を求める量産製品のデザインと、「作家の作品世界の再現」を目指す作業は一見ベクトルが違います。しかし、人や物、出来事がもともと備えた魅力を表出させるという、僕たちの創作活動のイメージの中では共通しています。デザインや工業的な技術を用いて芸術思想の具現化を試みる作業となりました。

→福島 諭WEBサイト

Client : 福島 諭(作曲家)
Exhibition : 第18回文化庁メディア芸術祭作品展(国立新美術館)
2015