電子音響彫刻『SAKYU』

絶えず変化する音のフォルム

作曲家 福島 諭さん、映像作家 遠藤 龍さんと企画・出演・展示を行う「音楽」「映像」「立体」の実験的イベント「RGB」。2019年10月14日に行われた3回目は、新潟市中央区の文化施設「砂丘館」の蔵を舞台に開催されました。海岸からほど近いこの建物の呼び名と海風、それによってできた砂紋から着想し、絶えず変化する音のフォルムと対峙する作品を展示しました。

厚み0.5mmのふたつの円盤が、振動しながら指定された周波数の音を発しています。盤上に砂をふりかけると幾何学的な砂紋の断片が浮かび上がり、音の変化とともに姿を変え続けます。音源の順序はランダムで、砂つぶの動きも予想できないため、砂紋の姿が再び同じ形状になることはありません。

予め円盤が強く共鳴して砂紋を結ぶ正弦波の値を探り、一定の長さの音源として準備。それらを取り込んだiPhoneから、円盤に取り付けた振動スピーカーへランダムに出力します。黒から11種、白から1種、無音を挟み出力される音源は、その時々で異なる響きになります。本来単音として認識される正弦波は、円盤の振動や共鳴を伴いより複雑な音響となりました。円盤の共鳴を手がかりに音を選んだ作曲作品と言えるかもしれません。

「形状」「寸法」「素材」の組み合わせを探り、物性を観察して音を導く作業は予想外の出来事の連続でした。漠然としか捉えられていなかった「音」を、「物質」や「現象」のひとつとして捉える作業となり、これまでに無い性質の作品となりました。周波数選定や音源作成について、技術的にサポートして頂いた作曲家 福島 諭さんに感謝いたします。

Exhibition : RGB3
Place:砂丘館(旧日本銀行新潟支店長役宅)
technical support : 福島 諭(作曲家)
2019